お鈴のとりあえず毎日

マレーシア人の嫁とホーチミンで暮らすお話。

第13話 麻雀と将棋

基本的には毎週髪の毛の手入れをしている。坊主というスタイルはなかなかにめんどくさいのだ。自分で髪を切っているのだが、安いバリカンしか買ったことがなく、その耐久年数は1年という結論は20代前半には出していた。特にバリカンに愛情を持っている訳ではないが、現在の物は8代目バリカンだと記憶している。つまり、3代目 J SOUL BROTHERSなど、とうの昔に置き去りにしているのである。
そんな8代目 毛ー剃ーるブラザーズのバリカンで、いつのも様に髪の手入れをしようとすると、だいぶ俊敏さが失われている事に気づいた。買ったばかりの頃はウサインボルトの様にスムーズに回転していた刃が、今では地区の運動会で走るお父さんの様な回転しかしていない。こんな時は油をさす事で対応してきたが、前回 油がなくなってしまい緊急対応としてゴマ油をさして使ったことが今日になって響いてしまっていた。前回のこうばしい香りはなく、ベタつきだけが刃と刃の間を占拠した。

 


少し前からここホーチミンでも麻雀をしている。一ヶ月に1 、2回程度の頻度で楽しんでいるのだが、先週くらいに立て続けに麻雀をやる事になってしまった。仕事が終わってからの麻雀なのでスタートが深夜になり帰宅は朝になる。毎回、麻雀の前には嫁にメールを入れるのだが、週に3回ともなると流石にピリピリした空気を感じずにはいられない。ここで大切なのは、返信メールから怒りメーターが今どこを指しているのか敏感に感じる危機管理能力である。先週のやりとりはこれだ。
基本的僕は「今日、麻雀します」とだけ送っている。
初日は「K」との返信だ。 これはOKの略である。一文字の返信で温かさはほぼ0ではあるが、okをもらっているので、ここはまだ突き進んでよし。
2日目は「surprise」との返信だった。 これを「わぉ ビックリ」などという感覚で捉えていたら即刻ゲームオーバーになる。これは「昨日の「K」の意味をわかってねーのか?あぁ?連続で麻雀?夜道は気をつけろ」という解釈になる。ただここはあえて「ビックリさせちゃった。テヘペロ」ぐらいの気持ちで現実逃避すれば問題ない。まだ突き進める。
そして3日目は「enjoy your life」との返信。将棋では、この様な状態を「詰み」と言ったりする。

 

 

強い者と闘う時は、ただただ自分を信じればいい。

 

第12話 黄色の紙パック

最近、お酒の席でよく話題になるゆとり世代について、思いを馳せてみたい。ゆとり世代の定義はわからないが、僕の中では土曜日が休みになった頃からだと思っているので、まさに僕はその代表だと自負している。このゆとり世代世の特徴としては、リプトンの500mlパックのレモンティーを定期的に飲んでいないと生きていけない病に感染している事がよくあり、男性に限るがエースコック豚キムチを異常に好む特徴もあるとされている。また、女の子はプリクラ帳という謎の手帳も保有していた。ゆとり世代としてこれからも頑張っていこうと思う。

 

さて、カレーは飲み物という言葉をFacebookでたびたび見ていて、頭の片隅に残っていたのだが、嫁が小さいシュークリームを3つほど吸い込むように食べるのを見て、シュークリームは空気。と思うも、難易度が高く、英語で伝えられなかった事が、8月の悔しいランキング1位だ。ちなみに、先月の一位は、「すこし太った」とこぼす嫁に、「地球にしめるお前の割合が増えて良かったな」を英語で言えなかったこと。

 

いつも優しさをありがとうございます。

 

第11話 嫁と息子のコンビプレー

最近、ウコンのチカラやヘパリーゼ的な二日酔いにいいとされる物を飲んでから飲みに行く事があるのだが、これは僕の中でアクセルを踏み込むための儀式になってきており、深くお酒を飲んでしまうため、逆に死にそうな朝を迎える事に42回目で気づけた事が、今年一番の発見である。

 

さて、少し前に息子も帰ってきてまた家族三人の暮らしがはじまった。1歳半の息子はまだ喋る事はかなわないが、お母さんの言っている事がわかるようで、言われた事をジェスチャーで示してくれる。例えば「車」というと、ハンドルを握っているそぶりをしたりするのだが、全て嫁から中国語で仕込まれたみたいで、俺の言葉には全ての感情を捨て去ったような綺麗な目をひん剥いて立ちつくしている。それが嫁には嬉しかったようで、色々と俺にはできないコンビプレーを披露してくれた。その内容が、「バイク、麻雀、タバコ、トランプ」であった。まだ2歳にもならない子供に仕込む内容ではない。嫁はどこに向かって子育てをしているのか心配だ。

 

最近、この町のニートマンからよくお誘いを受けてとっても嬉しいのだが、何度もお断りするのが申し訳無く、「行けたら行きます」とお断りしているのだが、「OK、待ってる」と返ってくるのが、この街でニートをするコツだと思う。

 

いつでも仁王立ちの内弁慶

第10話 家庭的な女性

おいしいパスタを作れて家庭的な女性は、大貧民で負けてマジ切れするような奴の事を好きになるのかという疑問が出てきてしまった。また、マジギレしているのに、それを見て笑って「楽しいね」とはなかなか言えない。それをやすやすとこなせるというのは、当然素晴らしい女性であり、繰り返すが大貧民でマジギレするような奴を好きになるのであろうか?
これはやはり深く探っていく必要がある。
まず、大貧民でマジギレするという背景には、やはりギャンブルの臭いを払拭する事はできない。ただのカードゲームではそこまで熱くなる事はないし、三人でグルになって1人が連敗するという状況は考えられるが、「一目惚れ」というワードがある事からその日に初めてあった事は明白で、連携の取れるスクラムを組むのは難しい。さらに時間を潰すためにパチンコ屋に行く性格からもお金をかけての大貧民であった事はすでに確定の域にある。やはりなぜ彼を選んだのか疑問は深まるばかりだ。
ただその後付き合っている事を考えると、何か気になる事があったはずである。そこでさらに読み進めると、付き合う前から妄想が膨らみ、嬉しくてスキップしている事実を発見した。ギャンブル好きで暴れん坊なのに、嬉しくてスキップ。この落差が女性の心を動かした可能性が高いとみている。これはギャップをうまく取り入れた新しい口説き方なのかもしれない。つまりこのギャップを演じきれる狡猾さをうちにひめているできる男という事になる。さらに読み返してみると、怒鳴った後にパチンコ屋に行き、景品の化粧品を持ち帰るあたりのやり口は、マジギレからのスキップと全く同じ手法なのだ。
これだけ紐解いたので今後の夫婦生活に役立てたいところではあるが、僕には嫁を前にして、怒鳴ってパチンコ屋に行く勇気はない。そんな事をすれば、とんでもないカワイガリが待ってるのだから。

アリかナシでいうと猫。

第九話 修正テープと罪悪感

今日スタッフから「社長、コーヒー飲みますか?」ってきかれたので、「お願いします」って言ったら、僕のコーヒーとは別に8杯ほどスタッフのジュースも配達されて、請求が僕のところに来た。あの優しさに溢れた笑顔は僕をこの罠に落とすためだったのだとわかり、慌ててメモ用紙に犯行に関わった全ての容疑者のフルネームを書きとめた。ジワジワと追い詰めて行くことにする。
そんな最高のスタッフにかこまれて仕事をしているのだが、その中でも最強の戦士といえば、Mr.チュンだ。彼は、会社設立時からの付き合いで、ともに数々の思い出を作ってきている。ブログに移行する前のラインの投稿を紹介がてらのせておく。
 
 
2015年の目標であった「いのちだいじに」は、どうにか達成し、新たに2016年を迎える事ができた。2016年の目標は「がんがんいこうぜ」にしようと思う。つまり、犬も歩けば棒に当たるという考えのもと、動いて、絡まって、から回って行こうというものだ。
お店も3年目で、マネジャーもオープンから僕を支えてくれている。動いて挑戦する準備はできている。
さっそく買ったばかりの携帯を紛失するという事案が発生したため、「がんがんいこうぜ」が発動した。携帯の追跡機能を使って探してみると、15分ほどのエリアにあることが分かり、マネージャーのチュンと冒険に出かけた。
地図が示す場所に到着し、3件ほど疑わしい家に目星をつけた。紛失モードの時は、着信音がなるため、なくした携帯に電話をし続けて、一軒一軒回って行く事にした。一軒目にチャイムを鳴らし待っていると、上半身裸で金のネックレスをした、全身に何やら蛇やら龍などの絵が見事に書かれている方が出てきた。もちろん、作戦コマンドが「がんがいいこうぜ」の僕たちは、互いに顔を見合わせ、一度うなずいた。そして俺はこう続けた。「そろそろ店が心配だから戻るか」と。そしてチュンは「そうですね。」と相槌をうった。さすが、2年も共に働いていると、見事に危機管理シュミレーション能力がシンクロする。金ネの男に一礼して、15分かけて来た道を戻った。帰り道、何度も自分に言い聞かせた。「俺は、携帯なんかより、もつ鍋を楽しみに来てくれるお客様をとっただけの話だ。」と。
 
 
そんなMr.チュンが、なによりロックだなぁと感じる時は、数独を9割進めたところで間違いに気づくも、店の修正テープを無駄遣いして、最初の状態に戻し、また一からやり直す、ハートの強さだ。
修正テープの無駄遣いには、洗濯機を回した後に部屋からでてきた片方しかない謎の靴下を、回っている洗濯機に入れる時くらいの罪悪感は感じて頂きたい。
 
いつも優しさをありがとうございます。

第八話 稀勢の里と夏場所

昔、居酒屋で店長をしていた時、カワイイ高校生バイトに「店長は彼女とかいるんですか?」的なことを聞かれて、ヤバイ!これは告白されるってドキドキしながら「いないよ」と返答すると、「なんか うけますね!」ってとんでもない直球がかえってきて、見逃しの三振になったことを思い出した。ニヤニヤしながら「いないよ。」と答えた時の、俺の感情を返せ。


そんな店長時代に「私はチョウセイです。今お祭りにいます。」って遅刻の連絡をしてきた中国からの留学生チョウさんが、「店長お土産です」ってりんご飴を買って来てくれたので、2時間の遅刻に目をつぶった判断は、今だに間違えじゃなかったと思っている。
 
さてさて、今日Yahooニュースを見ていると、稀勢の里夏場所に出場を決めた事が書いてあって、嫁が来週ホーチミンに帰ってくることを思い出した。もちろん息子も一緒だ。毎日テレビ電話で息子を観察しているのだが、「パパ」と「バイバイ」の区別がついてない様で、テレビ電話がつながるとすぐに、「バイバイ」と電話を切ろうとする辺りは、将来有望である。ちなみに、僕は「お父さん」と呼んでもらいたいので、毎日のように「お父さん、お父さん」とすり込んでいたのだが、返答はいつも「まんま」であった。手前味噌を売りつける親バカで申し訳ない。
 
全ての日々は、思い出に繋がっている。

第七話 フライトマップ

もし僕がアンパンマンで、お腹がすいている人がいたら自分の頭の一部をあげるだろうか?としみじみ考えた結果、きっとあげると思うが、おかわりの要求が来た場合、 「よく食べるね」と一言イヤミを言ってしまうと思う。

 
さて、だいぶ時間が流れてしまったが、先日 日本に一時帰国していた時の話をまとめておく。
僕の希望は年に二回くらいは日本に帰りたいと思っている。ただ、ポケットのありがとう との相談が必要であるため、年一回ほどのペースにとどまっている。ポケットのありがとうもビスケットの様に叩けば増えていけばいいのにと、せつに思う日々を暮らしている。しかし、質量保存の法則からは逃れる事はできず、やはりビスケットも1枚が2枚になるのではなく、割れて0・5枚が2つになっていると事に思考が届き、現実とは優しさのかたまりであるとわかった。
日本では東京と地元の2カ所で優しさに触れた。東京では夢を追って頑張っている友人とお酒を飲んだ。彼は歌う仕事を選び、その業界では有名になっていた。地元の焼肉屋で共に働いていた頃から目標にしていたので、「諦めなかった奴が掴むのさ」ブルーハーブの言葉が無限に心の中でループした。
 
その後、地元に帰りやいのやいのしていたら、すぐにホーチミンに戻る日を迎えてしまった。いつもは1人で寂しくホーチミンに帰るのだが、今回はパパさんと帰ることになっていた。パパさん曰く、心の中で半分くらい海外に行きたくないと思っているから、今回無理やり海外に行かないと一生いかないと思った。。とのことだった。
始めての海外旅行だというのに、バックなどは持たず、ポケットにパスポートを入れ、下駄をはいている姿を当日の朝 玄関で発見した。いろいろな疑問を持ったが、そこには彼の美学があると思い、多くはきかなかった。空港まではバスで2時間かかる。高速のサービスエリアで休憩にバスを降りると、飛行機の中で食べると、おつまみの昆布を買って来ていた。その昆布も空港に着く頃には全てを食べつくしていた。 「機内食が出るから」と悲しげにしているパパさんに声をかけ飛行機に乗り込んだ。
飛行機の中で、行きたい場所や食べたい物などのヒヤリングをするも、「特にない」との返答だった。5時間のフライトは長い。座席のテレビの使い方を説明すると、「今、どこを飛んでいるか知りたい」とのことだったので、世界地図の画面に切り替えた。マップ上に飛行機のアイコンがありどこを飛んでいるかわかる、あの退屈な画面である。そのマップから一度も画面を変えることなく、5時間のフライトを楽しんだ人を僕は始めて隣で見つけた。到着後「これで、静岡の家から見える飛行機がどこに向かってるかだいたいわかるな」と小さい声でパパさんは呟いていた。いろいろな意見はあると思うが、想像力が豊かな父を持って幸せである。
 
その後ホーチミンでもいろいろと起こるのだが、それはまた別のお話。
 
産まれながら天運、我にあり。