お鈴のとりあえず毎日

マレーシア人の嫁とホーチミンで暮らすお話。

第二話 小さなテント

昔、居酒屋で店長をしていた時、カワイイ高校生バイトに「店長は彼女とかいるんですか?」的なことを聞かれて、ヤバイ!これは告白されるってドキドキしながら「いないよ」と返答すると、「なんか うけますね!」ってとんでもない直球がかえってきて、見逃しの三振になったことを思い出した。ニヤニヤしながら「いないよ。」と答えた時の、俺の感情を返せ。

さて、こんな僕も髪が長い時期があった。触るものみな傷つけていた時代だ。 小さい頃から通っていた床屋さんには何も告げることなく、街ではやっていた美容院に浮気をした。
始めての美容院は緊張した。綺麗なお姉さんはいっぱいいるし、そこは顔がビシャビシャになるシャンプー台など もない。前向きではなく、後ろ向きでシャンプーを受けれる。まだ、ミニーに出会っていなかった僕には衝撃の連続だった。シャンプーの時にミニーレーダーが反応して、小さなテントを張ってしまわぬように、平常心を心がけた。
「痒いところありますか?」優しい声が耳に届いた。平常心が大きく揺さぶられた。ただ、謎のガーゼが顔面にちょこんと乗っていたので、僕の動揺を見透かされずにすんだ。
「鬼のツノがはえてる部分が痒いです。」これが僕の精一杯の返答だった。
「はい。」 冷たく さめた声だった。
2度も謎のガーゼに救われるとは、考えもしなかった。

全ての日々はいい思い出につながっている。