お鈴のとりあえず毎日

マレーシア人の嫁とホーチミンで暮らすお話。

第七話 フライトマップ

もし僕がアンパンマンで、お腹がすいている人がいたら自分の頭の一部をあげるだろうか?としみじみ考えた結果、きっとあげると思うが、おかわりの要求が来た場合、 「よく食べるね」と一言イヤミを言ってしまうと思う。

 
さて、だいぶ時間が流れてしまったが、先日 日本に一時帰国していた時の話をまとめておく。
僕の希望は年に二回くらいは日本に帰りたいと思っている。ただ、ポケットのありがとう との相談が必要であるため、年一回ほどのペースにとどまっている。ポケットのありがとうもビスケットの様に叩けば増えていけばいいのにと、せつに思う日々を暮らしている。しかし、質量保存の法則からは逃れる事はできず、やはりビスケットも1枚が2枚になるのではなく、割れて0・5枚が2つになっていると事に思考が届き、現実とは優しさのかたまりであるとわかった。
日本では東京と地元の2カ所で優しさに触れた。東京では夢を追って頑張っている友人とお酒を飲んだ。彼は歌う仕事を選び、その業界では有名になっていた。地元の焼肉屋で共に働いていた頃から目標にしていたので、「諦めなかった奴が掴むのさ」ブルーハーブの言葉が無限に心の中でループした。
 
その後、地元に帰りやいのやいのしていたら、すぐにホーチミンに戻る日を迎えてしまった。いつもは1人で寂しくホーチミンに帰るのだが、今回はパパさんと帰ることになっていた。パパさん曰く、心の中で半分くらい海外に行きたくないと思っているから、今回無理やり海外に行かないと一生いかないと思った。。とのことだった。
始めての海外旅行だというのに、バックなどは持たず、ポケットにパスポートを入れ、下駄をはいている姿を当日の朝 玄関で発見した。いろいろな疑問を持ったが、そこには彼の美学があると思い、多くはきかなかった。空港まではバスで2時間かかる。高速のサービスエリアで休憩にバスを降りると、飛行機の中で食べると、おつまみの昆布を買って来ていた。その昆布も空港に着く頃には全てを食べつくしていた。 「機内食が出るから」と悲しげにしているパパさんに声をかけ飛行機に乗り込んだ。
飛行機の中で、行きたい場所や食べたい物などのヒヤリングをするも、「特にない」との返答だった。5時間のフライトは長い。座席のテレビの使い方を説明すると、「今、どこを飛んでいるか知りたい」とのことだったので、世界地図の画面に切り替えた。マップ上に飛行機のアイコンがありどこを飛んでいるかわかる、あの退屈な画面である。そのマップから一度も画面を変えることなく、5時間のフライトを楽しんだ人を僕は始めて隣で見つけた。到着後「これで、静岡の家から見える飛行機がどこに向かってるかだいたいわかるな」と小さい声でパパさんは呟いていた。いろいろな意見はあると思うが、想像力が豊かな父を持って幸せである。
 
その後ホーチミンでもいろいろと起こるのだが、それはまた別のお話。
 
産まれながら天運、我にあり。