お鈴のとりあえず毎日

マレーシア人の嫁とホーチミンで暮らすお話。

第26話 トミカを床に走らせて

息子と2人でユーチューブをみていると、僕が小さい頃に観ていた忍たま乱太郎があったので、一緒に観ることにした。当時は気づかなかったが、主題歌がなかなかロックな歌詞で「ヤリたい子とヤッたもん勝ち、青春なら。」とのっけからハードにかましてくれた。やっぱり青春はそうでなきゃならないが、なかなか難しい話はだ。まずいろんな意味で勇気が必要で、80%、90いや、100%必要だ。そうさ100%勇気なのである。勇気の使い方は学校では教えてくれないが、こういったみじかななところで我々に教えてくれていたのだと思う。

 

 

息子の幼稚園の休みに合わせて、嫁と息子はマレーシアに行く予定だった。その日は18時のフライトであったが、少し前にメールでディレイの連絡が入っていた。嫁は久しぶりの実家だったので、朝からウキウキしているのが、モップをかけている後ろ姿から溢れていた。いつもなら、床に落ちているゴミと旦那である僕の区別がつかないほどに集中しているモップがけ七段の嫁も、今日ばかりは鼻歌まじりであった。息子はバカのひとつ覚えのトミカを床に走らせては、取りに行くという遊びに興じている。時折、お父さん見て見てと僕の視線を集めようとするが、そのトミカの遊びはすでに4万回ほど見ているから丁寧にお断りして、先に仕事に出かけた。
18時ごろに電話がなった。嫁からだ。悲しそうな声で「今日マレーシアに帰れないみたい。」と。事情を聞くと少し前に更新したパスポートとレジデンスカードの番号が一致しないためだと。続けてすでに2ヶ月くらい不法滞在になっているとの事だった。電話の向こうではこの事態を全く分かっていない息子が「スクールバスは、4人のれるね?」と斜め上な質問を嫁へと投げかけている声がうっすらと聞こえた。
ざっくり状況を聞くだけでもなかなか難しい問題なのは把握できた。とりあえず嫁にイミグレーションオフィスで待機するよに話し電話をきった。その時 僕は、とっても楽しみにしていたマレーシアへの帰省をどうにかさせてあげたい、などとは微塵も感じてはいない。頭をよぎったのは今夜の麻雀大会をどうすればいいか?だけであった。意気消沈して帰ってくる嫁を前にさすがに僕も「今日、麻雀行ってくる」とは言えない。ここでそんな危険牌は打てない。打ったら飛ぶ。焼き鳥もついてる、チップも相当持っていかれる。今俺に出来ることをやるしかなかった。
ミスターチュンや弁護士さんなどに事情を話すと、空港に知り合いがいてもしかしたら無理くりねじ込める可能性が出てきた。運良く飛行機の出発が遅れていたので、大慌てで必要な手続きをしてもらい、なんとか飛行機に乗れるようになった。ご尽力いただいた方々には感謝しかない。

 

 


レスリングの吉田沙保里さんが引退するというニュースが流れてきた。僕は全くレスリングの事はわからないが、吉田選手が最強という事は知っていた。
「相手が自分のタックルを研究して対策してくる、だから全員タックルで倒した。」というエピソードが大好きだ。
驚いたのは身長が157cmということ。「闘気や気迫がすごいと相手が巨大に見える」という例のアレは本当に存在する。

 


逆風はねのけ風に乗れクラシック