お鈴のとりあえず毎日

マレーシア人の嫁とホーチミンで暮らすお話。

第15話 風のたより

 

最近、うんこが出そうでお腹が痛い時をカッコつけて「別れの季節」と呼んでいる。これは食べ物から栄養をいただき、排泄する事を「別れ」という言葉に置き換え、また新たなる日々を過ごして行くさまを「季節」として表現した徳の高い言葉だと自負している。使い方としては、「あーやばい別れの季節だ」や、「昨日さー電車で別れの季節になっちゃって大変だったよ。」などのようにつかう。ちなみにオナラは「風のたより」と呼んでいる。高度な技術ではあるが、合わせて使うと「別れの季節が訪れ、トイレに座り別れの時を待っていると、風のたよりだけが通り過ぎた。それはまるで我々の別れを惜しむように。」となる。


おしゃぶりをこよなく愛す もうすぐ2歳になる息子は、俗に言うイヤイヤ期に突入したようで、気に入らない事があると大声を出したりテーブルを叩いたりして自分の気持ちを表現している。ひどい時はあれだけ愛していたおしゃぶりも投げつけたりする。この、物を投げる行為は危険だからしっかり注意してと嫁に念を押されていたので、これは父としてしっかり注意しようと思うも、数年前にスタッフに玉ねぎを投げた記憶が蘇り、「気持ちはわかるよ」と全く威厳のない注意をしてしまった。その一部始終を、料理を作りながら見ていた嫁は、まな板に向かって首を横に振っていた。


ひとりで生きていけるふたりが、それでも一緒にいるのが夫婦だと思う。
TIFFANY & Co.

第14話 歌うたいのバラッド

先日、お客さんと話している時に「なんのお仕事されてるんですか?」と聞くと「僕の仕事は歌うたいです。」と答えられ、カッコイイなーと思ったので、慌てて僕も負けじと「僕の仕事はモツ洗いです。」と訳のわからない事を言ってしまった。話し始めて1分で下っぱ感をアピールして後悔している。

 

 

特にこれといって趣味などはない平々凡々の僕がかろうじて趣味と呼べそうなものは、クシャミを誘発して楽しむ事くらいだと思う。こより、つまりはテッシュをねじって尖らせたものを鼻にさしコチョコチョしているのだが、今日の朝もその趣味を楽しんでいると、息子は不思議そうに僕を観察していた。すでに技術的にはゴットフィンガーの域にいる僕は10秒ほどでクシャミをする事ができ、それを見た息子はかつてないほどに喜びゲラゲラと笑っていた。それに気を良くした僕は2年分くらいクシャミを息子に差し上げた。時間にして10分くらいの話だが、あまりに喜んでいる息子の笑い声を聞きつけ、キッチンで洗い物をしている嫁も様子を見に来た。この素晴らしい趣味を息子にも味わって頂きたいというホスピタリティから、僕がこよりで息子の鼻をコチョコチョしてあげている時に嫁が登場というタイミングだった。親子の暖かい遊びを見るや、誘拐されそうな我が子を守る母のような勢いで、僕から息子を引きはがし、部屋へと去っていた。
なぜそんなに怒ったのかわからない。ただ、まだ2歳にならない子供に大人の遊びを教えた事に怒っているのだと自ら結論付け、出社したのであります。


うんこも元気も出るもんじゃない。出すもんだ!

第13話 麻雀と将棋

基本的には毎週髪の毛の手入れをしている。坊主というスタイルはなかなかにめんどくさいのだ。自分で髪を切っているのだが、安いバリカンしか買ったことがなく、その耐久年数は1年という結論は20代前半には出していた。特にバリカンに愛情を持っている訳ではないが、現在の物は8代目バリカンだと記憶している。つまり、3代目 J SOUL BROTHERSなど、とうの昔に置き去りにしているのである。
そんな8代目 毛ー剃ーるブラザーズのバリカンで、いつのも様に髪の手入れをしようとすると、だいぶ俊敏さが失われている事に気づいた。買ったばかりの頃はウサインボルトの様にスムーズに回転していた刃が、今では地区の運動会で走るお父さんの様な回転しかしていない。こんな時は油をさす事で対応してきたが、前回 油がなくなってしまい緊急対応としてゴマ油をさして使ったことが今日になって響いてしまっていた。前回のこうばしい香りはなく、ベタつきだけが刃と刃の間を占拠した。

 


少し前からここホーチミンでも麻雀をしている。一ヶ月に1 、2回程度の頻度で楽しんでいるのだが、先週くらいに立て続けに麻雀をやる事になってしまった。仕事が終わってからの麻雀なのでスタートが深夜になり帰宅は朝になる。毎回、麻雀の前には嫁にメールを入れるのだが、週に3回ともなると流石にピリピリした空気を感じずにはいられない。ここで大切なのは、返信メールから怒りメーターが今どこを指しているのか敏感に感じる危機管理能力である。先週のやりとりはこれだ。
基本的僕は「今日、麻雀します」とだけ送っている。
初日は「K」との返信だ。 これはOKの略である。一文字の返信で温かさはほぼ0ではあるが、okをもらっているので、ここはまだ突き進んでよし。
2日目は「surprise」との返信だった。 これを「わぉ ビックリ」などという感覚で捉えていたら即刻ゲームオーバーになる。これは「昨日の「K」の意味をわかってねーのか?あぁ?連続で麻雀?夜道は気をつけろ」という解釈になる。ただここはあえて「ビックリさせちゃった。テヘペロ」ぐらいの気持ちで現実逃避すれば問題ない。まだ突き進める。
そして3日目は「enjoy your life」との返信。将棋では、この様な状態を「詰み」と言ったりする。

 

 

強い者と闘う時は、ただただ自分を信じればいい。

 

第12話 黄色の紙パック

最近、お酒の席でよく話題になるゆとり世代について、思いを馳せてみたい。ゆとり世代の定義はわからないが、僕の中では土曜日が休みになった頃からだと思っているので、まさに僕はその代表だと自負している。このゆとり世代世の特徴としては、リプトンの500mlパックのレモンティーを定期的に飲んでいないと生きていけない病に感染している事がよくあり、男性に限るがエースコック豚キムチを異常に好む特徴もあるとされている。また、女の子はプリクラ帳という謎の手帳も保有していた。ゆとり世代としてこれからも頑張っていこうと思う。

 

さて、カレーは飲み物という言葉をFacebookでたびたび見ていて、頭の片隅に残っていたのだが、嫁が小さいシュークリームを3つほど吸い込むように食べるのを見て、シュークリームは空気。と思うも、難易度が高く、英語で伝えられなかった事が、8月の悔しいランキング1位だ。ちなみに、先月の一位は、「すこし太った」とこぼす嫁に、「地球にしめるお前の割合が増えて良かったな」を英語で言えなかったこと。

 

いつも優しさをありがとうございます。

 

第11話 嫁と息子のコンビプレー

最近、ウコンのチカラやヘパリーゼ的な二日酔いにいいとされる物を飲んでから飲みに行く事があるのだが、これは僕の中でアクセルを踏み込むための儀式になってきており、深くお酒を飲んでしまうため、逆に死にそうな朝を迎える事に42回目で気づけた事が、今年一番の発見である。

 

さて、少し前に息子も帰ってきてまた家族三人の暮らしがはじまった。1歳半の息子はまだ喋る事はかなわないが、お母さんの言っている事がわかるようで、言われた事をジェスチャーで示してくれる。例えば「車」というと、ハンドルを握っているそぶりをしたりするのだが、全て嫁から中国語で仕込まれたみたいで、俺の言葉には全ての感情を捨て去ったような綺麗な目をひん剥いて立ちつくしている。それが嫁には嬉しかったようで、色々と俺にはできないコンビプレーを披露してくれた。その内容が、「バイク、麻雀、タバコ、トランプ」であった。まだ2歳にもならない子供に仕込む内容ではない。嫁はどこに向かって子育てをしているのか心配だ。

 

最近、この町のニートマンからよくお誘いを受けてとっても嬉しいのだが、何度もお断りするのが申し訳無く、「行けたら行きます」とお断りしているのだが、「OK、待ってる」と返ってくるのが、この街でニートをするコツだと思う。

 

いつでも仁王立ちの内弁慶

第10話 家庭的な女性

おいしいパスタを作れて家庭的な女性は、大貧民で負けてマジ切れするような奴の事を好きになるのかという疑問が出てきてしまった。また、マジギレしているのに、それを見て笑って「楽しいね」とはなかなか言えない。それをやすやすとこなせるというのは、当然素晴らしい女性であり、繰り返すが大貧民でマジギレするような奴を好きになるのであろうか?
これはやはり深く探っていく必要がある。
まず、大貧民でマジギレするという背景には、やはりギャンブルの臭いを払拭する事はできない。ただのカードゲームではそこまで熱くなる事はないし、三人でグルになって1人が連敗するという状況は考えられるが、「一目惚れ」というワードがある事からその日に初めてあった事は明白で、連携の取れるスクラムを組むのは難しい。さらに時間を潰すためにパチンコ屋に行く性格からもお金をかけての大貧民であった事はすでに確定の域にある。やはりなぜ彼を選んだのか疑問は深まるばかりだ。
ただその後付き合っている事を考えると、何か気になる事があったはずである。そこでさらに読み進めると、付き合う前から妄想が膨らみ、嬉しくてスキップしている事実を発見した。ギャンブル好きで暴れん坊なのに、嬉しくてスキップ。この落差が女性の心を動かした可能性が高いとみている。これはギャップをうまく取り入れた新しい口説き方なのかもしれない。つまりこのギャップを演じきれる狡猾さをうちにひめているできる男という事になる。さらに読み返してみると、怒鳴った後にパチンコ屋に行き、景品の化粧品を持ち帰るあたりのやり口は、マジギレからのスキップと全く同じ手法なのだ。
これだけ紐解いたので今後の夫婦生活に役立てたいところではあるが、僕には嫁を前にして、怒鳴ってパチンコ屋に行く勇気はない。そんな事をすれば、とんでもないカワイガリが待ってるのだから。

アリかナシでいうと猫。

第九話 修正テープと罪悪感

今日スタッフから「社長、コーヒー飲みますか?」ってきかれたので、「お願いします」って言ったら、僕のコーヒーとは別に8杯ほどスタッフのジュースも配達されて、請求が僕のところに来た。あの優しさに溢れた笑顔は僕をこの罠に落とすためだったのだとわかり、慌ててメモ用紙に犯行に関わった全ての容疑者のフルネームを書きとめた。ジワジワと追い詰めて行くことにする。
そんな最高のスタッフにかこまれて仕事をしているのだが、その中でも最強の戦士といえば、Mr.チュンだ。彼は、会社設立時からの付き合いで、ともに数々の思い出を作ってきている。ブログに移行する前のラインの投稿を紹介がてらのせておく。
 
 
2015年の目標であった「いのちだいじに」は、どうにか達成し、新たに2016年を迎える事ができた。2016年の目標は「がんがんいこうぜ」にしようと思う。つまり、犬も歩けば棒に当たるという考えのもと、動いて、絡まって、から回って行こうというものだ。
お店も3年目で、マネジャーもオープンから僕を支えてくれている。動いて挑戦する準備はできている。
さっそく買ったばかりの携帯を紛失するという事案が発生したため、「がんがんいこうぜ」が発動した。携帯の追跡機能を使って探してみると、15分ほどのエリアにあることが分かり、マネージャーのチュンと冒険に出かけた。
地図が示す場所に到着し、3件ほど疑わしい家に目星をつけた。紛失モードの時は、着信音がなるため、なくした携帯に電話をし続けて、一軒一軒回って行く事にした。一軒目にチャイムを鳴らし待っていると、上半身裸で金のネックレスをした、全身に何やら蛇やら龍などの絵が見事に書かれている方が出てきた。もちろん、作戦コマンドが「がんがいいこうぜ」の僕たちは、互いに顔を見合わせ、一度うなずいた。そして俺はこう続けた。「そろそろ店が心配だから戻るか」と。そしてチュンは「そうですね。」と相槌をうった。さすが、2年も共に働いていると、見事に危機管理シュミレーション能力がシンクロする。金ネの男に一礼して、15分かけて来た道を戻った。帰り道、何度も自分に言い聞かせた。「俺は、携帯なんかより、もつ鍋を楽しみに来てくれるお客様をとっただけの話だ。」と。
 
 
そんなMr.チュンが、なによりロックだなぁと感じる時は、数独を9割進めたところで間違いに気づくも、店の修正テープを無駄遣いして、最初の状態に戻し、また一からやり直す、ハートの強さだ。
修正テープの無駄遣いには、洗濯機を回した後に部屋からでてきた片方しかない謎の靴下を、回っている洗濯機に入れる時くらいの罪悪感は感じて頂きたい。
 
いつも優しさをありがとうございます。