お鈴のとりあえず毎日

マレーシア人の嫁とホーチミンで暮らすお話。

第九話 修正テープと罪悪感

今日スタッフから「社長、コーヒー飲みますか?」ってきかれたので、「お願いします」って言ったら、僕のコーヒーとは別に8杯ほどスタッフのジュースも配達されて、請求が僕のところに来た。あの優しさに溢れた笑顔は僕をこの罠に落とすためだったのだとわかり、慌ててメモ用紙に犯行に関わった全ての容疑者のフルネームを書きとめた。ジワジワと追い詰めて行くことにする。
そんな最高のスタッフにかこまれて仕事をしているのだが、その中でも最強の戦士といえば、Mr.チュンだ。彼は、会社設立時からの付き合いで、ともに数々の思い出を作ってきている。ブログに移行する前のラインの投稿を紹介がてらのせておく。
 
 
2015年の目標であった「いのちだいじに」は、どうにか達成し、新たに2016年を迎える事ができた。2016年の目標は「がんがんいこうぜ」にしようと思う。つまり、犬も歩けば棒に当たるという考えのもと、動いて、絡まって、から回って行こうというものだ。
お店も3年目で、マネジャーもオープンから僕を支えてくれている。動いて挑戦する準備はできている。
さっそく買ったばかりの携帯を紛失するという事案が発生したため、「がんがんいこうぜ」が発動した。携帯の追跡機能を使って探してみると、15分ほどのエリアにあることが分かり、マネージャーのチュンと冒険に出かけた。
地図が示す場所に到着し、3件ほど疑わしい家に目星をつけた。紛失モードの時は、着信音がなるため、なくした携帯に電話をし続けて、一軒一軒回って行く事にした。一軒目にチャイムを鳴らし待っていると、上半身裸で金のネックレスをした、全身に何やら蛇やら龍などの絵が見事に書かれている方が出てきた。もちろん、作戦コマンドが「がんがいいこうぜ」の僕たちは、互いに顔を見合わせ、一度うなずいた。そして俺はこう続けた。「そろそろ店が心配だから戻るか」と。そしてチュンは「そうですね。」と相槌をうった。さすが、2年も共に働いていると、見事に危機管理シュミレーション能力がシンクロする。金ネの男に一礼して、15分かけて来た道を戻った。帰り道、何度も自分に言い聞かせた。「俺は、携帯なんかより、もつ鍋を楽しみに来てくれるお客様をとっただけの話だ。」と。
 
 
そんなMr.チュンが、なによりロックだなぁと感じる時は、数独を9割進めたところで間違いに気づくも、店の修正テープを無駄遣いして、最初の状態に戻し、また一からやり直す、ハートの強さだ。
修正テープの無駄遣いには、洗濯機を回した後に部屋からでてきた片方しかない謎の靴下を、回っている洗濯機に入れる時くらいの罪悪感は感じて頂きたい。
 
いつも優しさをありがとうございます。